里親制度と養子縁組はどう違う? 家族を迎える前に知っておきたい基本

人物

「里親と養子縁組って、結局なにが違うの?」
先日、同い年の友人とお茶をしていたとき、こう聞かれました。

私は野々宮京子といいます。
女性誌の編集部に20年いて、美容とライフスタイルのページを担当してきました。
いまはフリーの編集者として、美容業界で働く人たちの生き方を取材しています。

友人の質問に、私はうまく答えられませんでした。
「どちらも、よその子を育てる制度でしょう」くらいの理解しかなかったのです。
恥ずかしくなって、こども家庭庁や法務省の資料を読み込みました。

この記事では、調べてわかった里親制度と養子縁組の違いを、表を使って整理します。
年齢の不安や、こどもに生い立ちをどう伝えるかといった、迎える前に考えておきたいことにも触れます。

里親と養子縁組を分けるのは「法律上の親子になるかどうか」

いちばん大きな違いは、育てる大人とこどもが法律上の親子になるかどうかです。
里親は親子になりません。
養子縁組は親子になります。

里親は、こどもを「預かって育てる」仕組み

こども家庭庁の里親制度等についてによると、様々な事情で親と暮らせないこどもは全国に約4万2千人います。
里親制度は、そうしたこどもを児童相談所が里親家庭に委託し、家庭で育ててもらう仕組みです。

いまも多くのこどもは乳児院や児童養護施設で暮らしています。
里親やファミリーホームで暮らすこどもの割合(里親等委託率)は、平成26年度末の16.5%から令和6年度末には26.3%まで上がりました。
国は、施設よりも家庭に近い環境で育つこどもを増やす方向で動いています。

親権は原則として実の親に残ります。
里親は日々の生活や教育に必要なことは担いますが、戸籍上は他人のままです。
委託は原則18歳までで、必要があれば20歳まで延長できます。
実の親の状況が改善して、こどもが実家庭に戻ることもあります。

養子縁組は、戸籍の上でも親子になる仕組み

養子縁組は民法に基づく制度で、縁組が成立すると法律上の親子になります。
こどもは養親の苗字を名乗り、互いに扶養する義務や相続の関係も生まれます。
期限はなく、こどもが大人になってからもずっと親子です。

ここで、里親と特別養子縁組(実の親との関係が終わる養子縁組)を並べてみます。

比べるポイント里親(養育里親)特別養子縁組
法律上の親子関係なしあり(実の親子と同様)
親権原則として実親養親
戸籍変わらない養親の戸籍に入る
期間原則18歳まで(延長で20歳まで)生涯
行政からの手当里親手当・生活費などなし
主な窓口児童相談所児童相談所・民間あっせん機関

手当の行について、こども家庭庁の不妊症・不育症の情報サイトは、特別養子縁組では手当が支給されないとはっきり書いています。
里親は「社会の子を預かる仕事」に近く、養子縁組は「自分の家族を増やすこと」に近い。
私はそう理解しました。

里親には4つの種類がある

里親と聞くと1種類に思えますが、実際は4つに分かれています。
こども家庭庁の資料集社会的養育の推進に向けて(令和8年3月)をもとに整理しました。

種類どんな里親か登録世帯数
養育里親養子縁組を前提とせず、一定期間こどもを育てる15,392世帯
専門里親虐待を受けた子や障害のある子など、特に支援が必要な子を育てる713世帯
養子縁組里親養子縁組をして養親になることを希望する7,677世帯
親族里親親が亡くなった場合などに、祖父母などの親族が育てる624世帯

数字は令和7年3月末時点です。
登録里親は全体で18,038世帯、実際にこどもを預かっている委託里親は5,411世帯、委託児童は6,637人でした。
重複登録があるため、種類ごとの数を足しても総数とは一致しません。

養育里親に登録するまでの流れ

養育里親になるまでの流れも、資料集に図で載っていました。
ざっくりまとめると次のようになります。

  • 児童相談所などが開く説明会で、制度の話を聞く
  • 児童相談所に登録を申し込む
  • 基礎研修(1日程度)と施設での実習(1日程度)を受ける
  • 登録前研修(2日程度)と養育実習(2日程度)を受ける
  • 研修と並行して、職員による家庭訪問と調査がある
  • 都道府県の児童福祉審議会の意見を聞いたうえで、里親名簿に登録される

研修では、こどもの心と体のことや、こどもの権利について学びます。
先輩里親の体験談を聞く時間もあるそうです。

登録したあとも学びは続きます。
養育里親は5年ごと、専門里親は2年ごとに登録の更新があり、そのたびに研修を受けます。
なお、一つの家庭で同時に育てられる委託児童は4人までと決まっています。

見落としがちなのが養子縁組里親の位置づけです。
児童相談所を通じて特別養子縁組を目指す場合は、まず養子縁組里親として登録し、こどもと一緒に暮らしながら縁組の手続きを進めます。
里親と養子縁組は別の制度ですが、入り口の部分ではつながっているのです。

手当と生活費はどれくらい出るのか

同じ資料によると、令和7年度の単価は次のとおりです。

項目月額
里親手当(養育里親)90,000円
里親手当(専門里親)141,000円
一般生活費(乳児)65,910円
一般生活費(乳児以外)57,080円

このほか、教育費や医療費、進学や就職のときの支度金なども支給されます。

ただし、養子縁組里親と親族里親には里親手当が出ません。
養子縁組が成立すれば法律上の親子になるので、行政からの手当もなくなります。
わが子として育てるのだから当然といえば当然ですが、家計の計画を立てるうえでは知っておきたい点です。

養子縁組にも「普通」と「特別」の2種類がある

養子縁組にも種類があります。
法務省の養子縁組について知ろうによると、縁組後も実の親との関係が続く「普通養子縁組」と、実の親との関係が終わる「特別養子縁組」の2つです。

比べるポイント普通養子縁組特別養子縁組
成立のしかた市区町村への届出(未成年を養子にする場合は家庭裁判所の許可が必要)家庭裁判所の審判
養親の年齢20歳以上原則25歳以上の夫婦
養子の年齢養親より年下原則15歳未満
実の親との関係続く終わる
離縁話し合いでできる原則できない
戸籍の続柄「養子」「養女」「長男」「長女」など

普通養子縁組は、成人を養子にする場合にも使える幅の広い制度です。
一方、親と暮らせないこどもに温かい家庭を用意するための制度として作られたのが特別養子縁組です。
こども家庭庁の資料では、昭和62年にできた制度と説明されています。

特別養子縁組では、家庭裁判所が縁組を認める前に、養親がこどもを6か月以上育てた様子を見ることになっています。
こども家庭庁の特別養子縁組制度についてに、要件がわかりやすくまとまっています。

特別養子縁組の年齢要件は2020年に変わった

調べていて驚いたのが、古い情報がネット上にまだ多く残っていることです。

特別養子になれるこどもの年齢は、以前は原則6歳未満でした。
2020年4月に改正民法が施行され、いまは原則15歳未満に引き上げられています。
ところが検索すると、改正前の「6歳未満」のままの解説がいまも見つかります。

調べるときは、ページの更新日と、こども家庭庁や法務省の最新情報を確認するようにしてください。

司法統計年報によると、特別養子縁組の成立は令和6年で563件でした。
里親に委託されている児童が6千人を超えていることと比べると、かなり少ない数です。

50代・60代からでも家族は迎えられるのか

私と同世代の読者が一番気になるのは、たぶん年齢のことだと思います。

里親については、国の要件に「年齢に一律の上限は設けない」と明記されています。
こどもを育てられる年齢かどうかを、個別に判断する方式です。

実際、こども家庭庁の児童養護施設入所児童等調査(令和5年2月1日現在)では、こどもを預かっている里親家庭の里母は50歳代が36.0%、60歳以上が27.7%でした。
合わせると6割を超えます。
里親の世界では、50代・60代はむしろ中心の世代なのです。

特別養子縁組は事情が違います。
法律上の上限はありませんが、赤ちゃんを迎えるなら、その子が成人するまで元気に育てられるかが問われます。
たとえば認定NPO法人フローレンスは、新生児や乳児を託している関係で、養親の年齢の目安を45歳以下としています。

年齢の目安は、児童相談所や民間の機関ごとに違います。
50代で「養子を迎えるのは難しそうだ」と感じた人も、養育里親なら道があるかもしれません。
短い期間だけこどもを預かる里親の形を案内している自治体もあります。

迎える前に考えておきたい「真実告知」

里親でも養子縁組でも、いつかは向き合うことになるのが「真実告知」です。
育ての親が、こどもに生い立ちを伝えることをいいます。

このテーマを考えるとき、私の頭に浮かんだのがエステティックサロンの草分けであるたかの友梨さんでした。
週刊女性PRIMEのインタビューで、たかの友梨さんは14歳のときに自分が養子だと知ったと語っています。
学校の先生の言葉を伝え聞き、戸籍謄本を取り寄せて「養子」の記載を見つけたそうです。

2022年のデイリースポーツの記事では、そのときの気持ちの変化をこう振り返っています。
「甘えて罵倒してた母親が、実は他人の子を育ててくれてたんだと思ったら、急に感謝に変わりまして『この親に何か役に立ちたい。恩返ししたい』」

育ての母への感謝が、仕事の原動力になったといいます。
公式プロフィールによると、いまは社会福祉法人の後援会長として児童養護施設の支援にも関わっています。

そんなたかの友梨さんは、いま2人の娘さんの母でもあります。
2026年1月、78歳の誕生日を迎えた翌日に、長女の友花さんから肖像画を贈られたことをInstagramに投稿していました。
「これまでの人生でいただいたプレゼントの中で間違いなく一番うれしい贈り物です」という言葉に、私も胸が熱くなりました。
たかの友梨さんが子供から贈られた肖像画について綴った投稿は、家族のかたちを考えるときに読み返したくなる一枚です。

たかの友梨さんの場合、告知を受けたのではなく、自分で知ることになりました。
日本財団の「ハッピーゆりかごプロジェクト」が行った当事者インタビューでも、告知を受けずに高校生のとき自分で調べて知った女性が、次のように話しています。
「大人たちが決定したことに、子どもである私の人生は左右されたわけです。そのことを私だけが知らなかった」

伝え方やタイミングに、ひとつの正解はありません。
それでも、こどもが自分だけ知らなかったと感じる形は避けたいものです。
迎える前から、夫婦や家族で「いつ、どう話すか」を話し合っておくと安心です。

最初の相談はどこにすればいい?

興味が出てきたら、まずは話を聞きに行くところから始めてみてください。
主な相談先は次のとおりです。

  • お住まいの地域を担当する児童相談所(里親登録の申請先でもある)
  • 里親支援センターやフォスタリング機関(研修や委託後の支えを担う)
  • 国の許可を受けた民間の養子縁組あっせん機関(特別養子縁組を希望する場合)

里親制度の説明会を定期的に開いている自治体もあります。
説明会に行ったからといって、すぐに登録しなければならないわけではありません。
私の友人も、まずは地元の説明会に申し込んだそうです。

まとめ

里親と養子縁組の違いを、あらためて整理します。

  • 里親はこどもを預かって育てる仕組みで、法律上の親子にはならない
  • 養子縁組は法律上の親子になる仕組みで、特別養子縁組では実の親との関係が終わる
  • 養育里親・専門里親には手当が出るが、養子縁組里親・親族里親や、縁組後の親子には里親手当が出ない
  • 里親に一律の年齢上限はなく、里母の6割超が50代以上
  • どちらを選んでも、生い立ちをどう伝えるかは迎える前から考えておきたい

調べ始める前の私は、里親も養子縁組も、自分には遠い話だと思っていました。
けれど、50代・60代の里親がこんなに多いと知って、少し見方が変わりました。

家族を迎える方法はひとつではありません。
関わり方の選択肢を知ることが、最初の一歩になると思っています。

最終更新日 2026年9月29日 by obliok